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©2001 minato



枯渇(からから)



‐‐‐ 前




「いい?犬夜叉。絶対、独りで行動しちゃ駄目よ。」
「わかったっつってるだろ!」
今日だけで、何度目だろうか?繰り返される、二人の会話。
今夜は朔の日。半妖の犬夜叉が、妖力を失い、人間に成る夜。
こんな日だというのに、かごめは国へ帰らなければならない。故に、心配なのだ。この無鉄砲が、自分が居ない間に危険なことに巻き込まれはしないかと。なのに、当の犬夜叉は、かごめの心配を余所に、面倒臭そうに返事をするばかり。
「いっそ、犬夜叉もかごめさまへついて行ったらどうですか?」
一向に留まることを知らない二人の会話に呆れて、半ばかごめに同情して、弥勒が唐突に言った。
「何言ってんだ?このくそ坊主。」
「坊主ではなく、法師と呼びなさい。」
「何処がどう違うんでぃっ!」
今度は、こちらの方で押し問答が始まりそうな気配だったので、珊瑚が口を挟む。
「確かに、かごめちゃんの故郷(くに)だったら、朔の夜でも安心なんじゃない?」
「なるほど!折角、かごめが帰らねばならん日とぶつかっておるのじゃからな。」
七宝も、的を得た、と言うように珊瑚の言葉に頷く。
「ちょ、ちょっと待て!なんで俺がわざわざかごめの故郷まで…。」
勝手に決定を下されてしまいそうな雰囲気に、犬夜叉が慌てて言った。
「いい考えね。それ。犬夜叉、行こう?」
かごめがあっさりと同意してみせる。確かに、この戦国の世よりは、何百倍も安全だ。第一、あの骨食いの井戸を通れるのは、自分と彼のみなのだから。
「けっ、やなこった。そんな逃げるみてえなこと。」
腕組みをして、そっぽを向く犬夜叉。しかし、それに負けるかごめではない。
「あんた、あたしが此処から一人で井戸まで戻っても、心配じゃないわけ?」
「う゛。」
かごめに睨まれ、一瞬、犬夜叉が怯む。
「勿論、送ってくれるよね?なら、そのまま一緒に行っちゃっても、別にいいじゃない。」
「そ、そんな訳には」
反論しようとする犬夜叉へ、突然かごめが表情を暗くさせて、
「犬夜叉、あたしと一緒に居たくないんだ…。」
しょんぼりと、肩を落とす。あっそう、判った…と。
「だ、誰もそんなこと言ってねえだろ!」
かごめの落胆に、極端に弱い、犬夜叉。まんまと罠に掛かっていることに気付くのが、遅い。
「決まりですな。」
「決まりじゃな。」
弥勒と七宝が、時機宜しく、判を押したように言った。
「てめえ、俺を追い払って、何する気だ?」
やらてばかりではいられない、と犬夜叉が弥勒へ矛先を向ける。
「は?」
とぼけた弥勒の、声。
「てめえの考えは、読めてんだっ。珊瑚と二人になろうって魂胆だろ!?」
凄んで、犬夜叉が言う。この法師の考えそうなことだ。
「何を馬鹿なことを。おまえ達二人のことを思って、提案してやったというのに。」
人の厚意を疑いおって、と犬夜叉の疑惑をやんわりと受け流す。
「そうだよ。犬夜叉。だって七宝が居るじゃないか。」
珊瑚が、腕に七宝を抱いたまま口を開いた。
「あ。」
弥勒が思わず上げた声に、一同は、沈黙する。
「気をつけろ、七宝。こいつ、毒くらい盛りかねねえ。」
犬夜叉が、こそっ、と七宝に耳打ちする。勿論、皆に聞こえるように。
「…弥勒さま?」
かごめも、弥勒を睨んでみせる。
「七宝、おまえ、何処ぞに行きたい、と言っていなかったか?」
「言っとらん。」
弥勒が言った言葉に、間髪入れず、七宝が答えた。
「…大丈夫かな。」
かごめが、段々不安になって来て、心配げな声を上げる。
「何言ってんの。法師さまくらい、別にどってことないよ。」
どうせ、犬夜叉との掛け合いが面白くて、ふざけて言ってるだけだろう、と珊瑚は言う。
折角、一緒にいられそうなかごめ達を、この馬鹿法師の所為で台無しにしてしまっては、申し訳が立たない。
「そうじゃ。おらも珊瑚から離れんから、心配無用じゃ。」
七宝も、胸を叩いて後に続いた。
「あなた達、私を一体なんだと…。」
深い溜め息を吐いた弥勒は無視して、かごめと犬夜叉が、井戸へ向けて出発するところであった。
「いいか!?妙な真似すんじゃねえぞ、弥勒。七宝、きっちり見張ってろ!」
「わかっておる!」
「珊瑚ちゃん、何かあったら、遠慮せず飛来骨の餌食にしていいんだからね。」
「当たり前だよ、そんなの。」
わいわいと別れの言葉を交わす一行の後ろで、またも弥勒が、大きな溜め息を、吐いた。







「犬夜叉とかごめについて行って、そのままおら達は楓のところで休んでおっても良かったのでは?」
二人を見送った後、弥勒の肩で七宝が問うて来た。
「道中、二人で話したいこともあるでしょう。私達は邪魔になる。」
弥勒の答に、なるほどの~、と七宝が頷いてみせる。
桔梗とのこともあり、二人でゆっくりと話す時間を作ってやりたかった気持ちに、嘘は無い。このままでは、かごめが辛いのは目に見えている。だから、せめて少しでも幸福な時間を過ごせれば。
(いいとこ、あるじゃない。)
弥勒の思惑を悟って、珊瑚も思う。
「私達は、少し先へ進みましょう。少々、路銀も用立てねばならん頃合ですし。」
「あ、そうだね。」
「この間弥勒が騙し取ったお宝は、もう残っておらんのか?」
「失敬な。その銭で飯を食い過ぎて腹を壊したのは、誰だった。」
傍から見れば夫婦に子供、か、兄妹達、といった和やかな雰囲気で、三人は歩を進めて行った。







山の麓の、平和そうな村。其処で三人は妖怪退治を請け負った。わざわざ御用聞きに廻らなくても、法衣姿の弥勒がいるだけで、仕事は向こうから寄って来る。
仕事の内容は、極小さなもので。家の中に何かが棲みつき、食料を食い潰しているとのこと。いくら家中捜しても何も見つからない為、妖怪か霊魂か、という結論に達したらしい。
「幽霊って、物、食べるの?」
「あまり、聞いたことがありませんなあ。」
せいぜい、生き血を啜るくらいか。内容からして、妖怪の線の方が濃いだろうと見て、弥勒と珊瑚が早速その家へ出向く。妖気を探し始めた二人は、あっさりと床下から出ている波動に行き着いた。
珊瑚の働きでその妖怪を外へ追い出して見ると、さほど大きくもない、狐の親子が這い出して来る。
妖力もごく微量な為、成敗するほどではないと踏み、その妖狐を追い払い、二度と入って来られぬように、対応策も打っておく。これで、終了。
報酬は、反物と銀細工。今夜の宿も此処で世話になることとなり、弥勒の本懐は遂げられた。
「法師って、報酬、取るの?」
「人様の好意は、無にしたらバチが当たります。」
今ひとつ納得出来ない珊瑚へ返した弥勒の返事は、仏の道に沿っているのか、いないのか。
「ま、いいけどね。」
諦めたように呟いて、珊瑚は椀の中の飯を、箸で口へと運んだ。
その隣では、乾いた会話が展開されている。
「弥勒。毒は盛っとらんじゃろうな。」
「盛ってません。」







「それじゃ、お風呂戴きますね。」
膳を下げに来た家の者から、湯が入りましたからどうぞ、と勧められ、珊瑚が腰を上げる。
「背中を流して差し上げましょうか。」
「要らん。」
弥勒の戯言を、珊瑚がすっぱりと切って捨てる。
「七宝、行こう。」
珊瑚が、ふわ、と七宝を抱き上げて部屋を出て行こうとすると、
「ちょっと待て。なんで七宝が一緒なんだ。」
ぎろ、と弥勒が七宝を睨みながらその頭を、わし、と掴み、こちら側へぐるりと向かせた。
痛いではないか、と抗議の声を上げ、七宝が続ける。
「おらは何も言っとらんぞ!」
「何してんの、法師さま。あたしが一緒に入りたいんだよ。」
珊瑚が呆れたように七宝を庇って言う。
「な、何故(なにゆえ)。」
「背中流して貰うのさ。」
がああああん、と弥勒の頭の上で鳴り響いているのを聞きながら、落胆する法師を見捨てて二人は湯殿へ向かって行った。
(ちくしょう。ガキは役得だ…。)
己が子供だったら、共に入ることにさほど意味は無いということにも気付かずに、弥勒が一人ごちた。







「七宝。」
「なんじゃ?」
湯船の(へり)に両腕を組むように載せ、珊瑚が体を洗っている七宝へ声を掛ける。
ざば、と湯を頭から被って、それから湯船へ飛び込みながら、七宝が返事をする。水飛沫が、珊瑚の頬にも掛かる。
「どうかしたの?」
一旦沈んでから、ぷはあっ、と浮かんで来た七宝は、珊瑚の隣に並ぶように、縁へ手を掛けて掴まった。其処へ投げられた、珊瑚の問い。
「どうか、とは、なんじゃ?」
七宝が、珊瑚を見上げて聞き返す。珊瑚は髪を高く結い上げてまとめ、かごめに貰った髪留めで留めている。濡れた後れ毛がうなじに張り付いて、妙に色っぽい。無論、七宝には判らぬ話だが。ここに弥勒が居れば、間違いなく見惚れていただろう。見惚れるだけで済むかどうかは、別として、だ。
「元気ないよ。」
短く、珊瑚が指摘する。優しい声音で。
それには目を伏せて無言になってしまった七宝へ、珊瑚が続けた。
「親父さんに、会いたくなった?」
こう見えても結構強がりな七宝だ。珊瑚が言わなければ、自分からは言わずにいたかもしれない。
それを見越して、珊瑚が先に言った。
「…珊瑚。」
図星、というような顔をした七宝が、大きな瞳を上げ、彼女の顔を見つめる。
昼間の妖怪退治。退治されたのは、妖狐の親子。その姿を見てから、七宝の様子がおかしいということに気が付いた。これだけ幼ければ、至極当然のこと。七宝は、その親子の姿に己を重ねていた。
「馬鹿だね。無理して。」
柔らかい表情を崩さずに、珊瑚が七宝をその胸に抱き上げる。背中を湯船に預けて、ゆったりと腰を下ろす。その動きに合わせて、湯面がゆらり、と円を描いて広がって行く。
「…珊瑚。でもな、おら…。」
遠慮がちに口ごもる七宝へ、珊瑚が先回りする。
「法師さまを見張ってなくちゃいけないから?」
恐らく七宝は、父の墓前へ参りたくなっているのだ。しかし。珊瑚を弥勒と二人きりにする訳にはいかぬ、と遠慮しているのだろう。珊瑚はそのように感付いていた。
「だって、犬夜叉とも約束したんじゃ。おらも珊瑚が心配じゃし。」
約束。普段喧嘩の絶えぬ犬夜叉との誓いを、破りたくはないと、健気に言った。それだけで、珊瑚の心はふうわりと温かくなって来る。
「子供が、そんな気を使うもんじゃないよ。」
父に会いたい思いは、判り過ぎるくらい、判る。それが例え墓前だとしても、止める理由は、無い。 ましてや、己の為にその思いをこの幼き者に我慢させるなど、珊瑚に出来る筈もなく。
「雲母貸してあげるから、行って来なよ。」
「良いのか!?珊瑚。」
七宝の顔が、みるみる明るくなる。その笑顔を見て、珊瑚も心地良い。
「そのかわり、法師さまには分からないように、出掛けてくれる?」
「よし、それで弥勒に気付かれぬように、朝早く帰って来れば良いのじゃな?」
まるで悪戯の算段でもするように、二人が言葉を交わす。大丈夫、とは言いつつも、念の為の策は抜かりなく打っておく、珊瑚であった。







庭に面した縁側に胡座を掻いて、法師が座っている。盆に載せられた銚子と杯。空には、満点の星。
春めいて来たとは言え、未だ、ほんの入り口に差し掛かったばかり。しかし、今夜の風は、星見酒と洒落込むには充分な暖かさを孕んでいる。月の明かりが無い為に、星の瞬きも助長されていた。
(あ~、美味え。)
手酌をしながら、弥勒が頭上一面に広がる星を眺め遣る。
折角犬夜叉を追っ払ったというのに、一人酒という、この体たらく。勿論、それだけの理由でかご めの故郷へ行かせた訳ではないのだが、当然、幾らかの理由の範囲を占めていたのも、事実。
(情けねえな。)
自分は、何をしているのか。欲しいと思った女が、居て。しかも、邪魔者は(幼い七宝意外には)居ない、という好機。普段の自分なら、逃す筈はないのだが。結局、今に至っている。
伝えられぬ思いとは裏腹、今のこの関係も壊したくはなくて、『仲間』 という都合の良い言葉に甘んじていた。
(欲しいくせに、今を壊したくないなんて、優柔不断の馬鹿男みたいなこと、言ってやがる。)
自嘲的な笑みを浮かべつつ、杯を口へと運ぶ。つい、と呑み干す度に、白っぽい光を放つ星群と目が合った。
何時か、その 『今の関係』 にさえ、満足し得ない日がやって来るのは判っているのに。
己の手練手管を使い、巧く言い含めて好きなようにすることも、可能かもしれない。しかし、その手を使えるほどに、軽い一時の交わりを求めている訳ではなく。
そしてまた、無理強い出来る筈もなく。もしも、『何か』 があれば、これまでのように共に旅を続けることさえ、危うくなる。
(よほど、失いたくねえらしい。)
今までの人生を鑑みても、信じられないくらい弱気(誠実?)になっている自分を、そう判断する。つまるところは、そうなのだ。ふう、と軽い溜め息を吐いて、また、手酌。
(う。)
湯殿から上がり、部屋へ戻ろうと廊下をやって来た珊瑚が、弥勒の姿を視界に認めて内心ぎくり、とする。その声が聞こえた訳でもないだろうが、彼の方も、彼女に気付いたらしい。
「おや、今上がったところですか。珊瑚。」
杯を手にしたまま、弥勒が珊瑚の方へ(こうべ)を向けて言った。
「う、うん。良いお湯だったよ。法師さまも戴いてくれば?」
何事も無かったように返事をする珊瑚。が、
「私はこの銚子を空けてから…七宝は、どうしました?」
珊瑚に纏わりつく七宝の姿が見えないことに気付いて、何気なく、弥勒が問う。
「…七宝は、眠くて先に上がっちゃったんだ。」
「…。妙ですな、此処は、通りませんでしたが。」
珊瑚の答に、弥勒が指を顎に当てて考えるような仕草をする。しゃり、と数珠の擦れる、音。
「法師さまが此処に来る前に、部屋に戻ったんじゃない?」
適当に誤魔化す、珊瑚。無論、慌てた素振りなど絶対に、見せない。
そうか、あいつ、お子様ですなあ、と弥勒が納得したように呟いた。それを聞いてほっと胸を撫で下ろした珊瑚は、弥勒の後ろを通り過ぎようとする。其処へ、彼が声を掛けた。
「珊瑚もどうです?湯上りには、また格別でしょう。」
もう一つの杯を珊瑚へと差し出しながら、彼女を引き留める。
「…法師さまと二人で?遠慮する。」
足を止めたものの、冷ややかな態度で断りを口にする、珊瑚。勿論、弥勒もこれで引き下がるような男であれば、誰も心配などしはしない。
「何を警戒している?私一人くらい、"どってことない" のではなかったですか?」
口端を上げて、少し意地悪そうな笑みを浮かべて見せる。負けず嫌いの珊瑚へは、こういう誘い方が一番効くと知っているのだ、この男は。
「うるさいなあ。一寸だけだからね。」
う、と一瞬詰まったものの、弱みなど見せられない。平静を装って、珊瑚が弥勒の隣へ腰を下ろした。杯を彼から受け取り、透明の酒を注いで貰う。
「今宵は、満天の星空ですよ。何の肴も、要りはしない。」
弥勒の言葉に、珊瑚が夜空を仰ぎ見る。
「う、わ。綺麗~。此処、特等席だね、法師さま。」
瞬く星の群れに感嘆の声を上げ、今冷たく言った言葉さえ忘れたように、弥勒の行動を奨励して見せる。その珊瑚の横顔を見て、弥勒が満足げに杯の酒を喉へ流し込む。
「しかも、此れも美味しい。」
少しずつ酒を口に含んで、珊瑚が言う。湯上りの所為か、少し頬は上気したままだ。
「でしょう。"星参拝" と言う銘酒らしいですよ。」
「へえ。」
良い名前、と呟きながら、今度は珊瑚が弥勒の杯に酒を注ぐ。
暫し、無言で星を愛でながら酒を酌み交わしていた二人だったが、珊瑚が口を開いた。
「今頃かごめちゃん達、何してるかな。」
瞳は星を追ったままで、ぽつりと呟く。
「どうでしょうね。犬夜叉が人間になっているのは、間違いないですがな。」
「はは、そりゃそうだ。」
「寂しいですか?」
珊瑚の口調に含まれた影を察して、弥勒が問うた。
「ん?んん~。寂しいって言うか…。何時も一緒に居る人達が居ないと、…静かだよね。」
言葉を選ぶようにして、珊瑚が答える。
「確かに、あの二人がいないと静かなのは否定出来ませんなあ。」
苦笑を浮かべて弥勒が隣の珊瑚を見遣ると、その横顔には紅が挿していた。目元も、何処かとろんとしている。
「珊瑚。おまえ、ちょっと呑み過ぎたか?」
「え?これくらいで酔ったりしないよ。」
と、本人は否定して見せるが、明らかに、酒は廻っている。風呂上りというのが、彼女が思った以上に酔いが廻るのを手助けしてしまったらしい。負けず嫌いの性格が災いして、弥勒の調子に合わせて杯を空けたのも、敗因(別に誰と勝負している訳ではないが)だった。
「顔が赤いですよ…。」
強がって言うのか、本当に本人だけが気付いていないのかは判らないが、そんな彼女を見て、弥勒がこっそり、くすり、と笑う。こうしていると、可愛らしいただの乙女だ。
平気だもん、と少し怒ったように言いながら、縁側に投げ出していた足を折って、膝を抱えるようにする。その右手は、空の杯を弄びながら。
酔ってしまうなんて、そんなことは出来はしない、のに。何の為に七宝が弥勒に気付かれぬように出掛けてくれたのか、意味を為さなくなってしまう。この法師と二人きりで、自分の方が潰れてしまうなんて言語道断。避けるべき所業。判っている筈なのに。
やばいかな。
そうは思っても、もう遅い。酒には特別強い訳ではないが、極端に弱い訳でもなく。それがこうも早く廻ってしまうとは。我ながら情けない。風呂上りに、強がってお酒なんて付き合うんじゃなかった。
そうと気付くには、あまりにも、星参拝が美味しくて、星が美し過ぎたのかもしれなかった。
そして、ふと今しがた湧いた感情を、仕舞っておくことも出来ない。口にしてしまおうか…?