爪紅の記憶
‐‐‐ 後
先日と同じく、その爪紅は可憐な姿を惜しげもなく晒していた。
ゆっくりと飛来骨を地へ置き、片膝を着いた珊瑚はその花弁へ用心深く手を伸ばしてみる。すると、その先へ触れるかどうかという時に、金魚の尾の如く、ふる、と花弁が泳いだ。さっ、と珊瑚が己の指を素早く引き戻すと、標的を失った花の
嘴は、ばく、と空を切っていた。
「……。」
しいぃぃぃん、と、珊瑚と爪紅が共に静寂へと包まれた後に。
「あんた、何者?姿を現しなよ。」
細心の注意を払いつつ、珊瑚が先に口を開いた。しかし爪紅は、秘するが花と言わんばかりの態度を貫いており全く埒が明かない。
珊瑚は、がし、とその茎の下端を掴むと強行手段へと打って出た。
「このまま根ごと引っこ抜くよ?」
「うわぁぁぁん、やめろぉーっ!」
突然童の声がしたかと思うと、その爪紅の
天辺から、ぽんっ、と人影が弾け出る。
左の親指で刀の鍔を持ち上げ、珊瑚は既に臨戦態勢へと入っていたのだが、向き合う相手の姿を目にし、些か拍子抜けしてしまった。身の丈もその着衣も、七宝とそう変わりはないであろう。何処からどう見ても幼い童ではあるのだが、髪の色が淡い
碧というのは異形以外の何者でもない。そしてそのふさふさとした頭の上には、薄赤の爪紅が編み込まれた花冠が乗っていた。
見せ掛けが如何な子供であろうとも、それに惑わされ気を緩ませる珊瑚ではなかったけれど、邪気も妖気も其処には感じる事が出来ず、戦意を喪失しそうになる。
「…あんた、妖怪…じゃないよね。」
「おいらはそんな化けモンじゃないやいっ。おいらは爪紅の精だいっ!」
珊瑚の問いに、何故か「えっへん」と胸を反らし鼻息荒くその童は答えた。
(いや、そんな偉そうに言われても困るんだけど…。)
胸中で一人ごちた後、珊瑚は余計な話は全てすっ飛ばし、一気に核心へと触れる。
「あんた、つい最近人間の記憶を奪ったりした?」
「そ、そんな事は知らないやいっ。」
明らかに狼狽を見せつつも白を切る精霊へ、珊瑚は鎌をかけた。
「そぅお?あの婆さん、すんごく困ってるんだけどなぁ…。」
「婆さんなんかおいらは知らん!おいらが盗ったのは坊主だいッ!」
…再び、沈黙。
珊瑚の鬼の様な眼差しに、爪紅の精は盛大に冷汗を垂らしながら
竦み上がっている。
「…で、その坊主の記憶。返して貰おうか…?」
「い、嫌だっ。これを返したらまた他の誰かが此処を通るのを待たねばならんのだッ!」
珊瑚の凄味を含んだ科白にたじろぎながらも、がば、と己の頭を庇う様に両手で抱えた精霊は、命知らずにも抵抗を見せた。
「…どういう事?なんでそんなに人の記憶が必要なんだい?」
童の言い様に引っ掛かり、珊瑚がその意味を問う。
無言のまま口をへの字に曲げ、じぃぃっ、と彼女を見上げて来るその子供の仕草に、手荒な真似が出来る程冷酷非道な人間になど最初から成れる筈もなかった。
「話してごらん。」
口を噤む爪紅の精を、珊瑚は柔らかな声音で促してやる。
頭上の花冠を隠す様に添えられていた小さな両手をそろそろと下ろした彼は、ようやく語る決心をした様だった。
「…おいら、落としてしまったんだ。おとうとおかあの思い出を…。」
それはつい先日の出来事。
退屈していた爪紅の精の子供は、とある山へと足を伸ばしていた。
普段自分の生きる領分では見掛ける事の叶わぬ動植物を目にし、
刻が経つのも忘れ遊び呆けていた。そうして何時の間にか山の奥深くまで入り込んでしまっていた事に気付き、そろそろ帰らねば、と思い始めた矢先。近くに"何か"の気配があるの感じ取り、興味半分、恐る恐るそちらの方を草陰から覗いて見ると。
其処に居座っていたのは、大きな大きな体躯の恐ろしい鬼。
ひっ、と息を呑んだ爪紅の精は、驚いた拍子に、頭に携えている花冠の実を、ぱぁん、と弾けさせてしまっていた。
辺りに飛び散る、己の種。
それは、爪紅の精霊にとっては記憶の一つ一つ。
慌ててその種を拾い集め、一目散に己の陣地まで逃げ帰って来たのだが。
どうしても、思い出せない事があった。その欠落した記憶は、今は亡き親精霊の面影。
もう一度あの鬼の棲む山へその種を捜しに行く勇気など、幼子には到底ある筈もなく。
けれどぽっかりと空いてしまった記憶の穴を吹き抜ける風は、ひゅうひゅうとあまりに寒くて、どんなものでも誰のものでもかまわないから"父母の思い出"で蓋をしてしまいたかったのだ。
故に、已む無く及んでしまった。
人間の記憶を盗む、という禁忌へ。
「けど、法師さまの記憶は全部
失くなってるよ?」
「人の記憶は、おいら達みたいに一粒一粒分けられてはおらんから。戴く時は全部、なんだ。」
珊瑚の問いに答えた後、けどなぁ、と爪紅の精は続ける。
「坊主なら、きっとそのおとうもおかあも立派な人間だろうと思うて。だからその思い出も幸せなものばかりだろうと思うて…。けど、こんなのは、要らなかったかもしれないや…。」
その言霊は、珊瑚の胸をぐさり、と貫くには充分過ぎる力を持っていた。
彼の法師の記憶では、寂しさは埋められぬ、と。
却って辛いばかりの思い出だったと ――― そういう意味だろうか。
――― 思い出さない方が、楽だったりしねぇのかな…。
昨日の弥勒の声が、珊瑚の胸の真ん中で蘇る。
固めた筈の決心が、僅かに揺らいでいた。
本当に、取り戻しても良いのだろうか。この先も、戦い生きて行くという思いが今の法師にも芽生えてさえくれれば、わざわざ過去に舐めた辛酸を思い出させる必要はないのでは ――― ?
「でも、まだこの記憶は返せん。次に誰かが手を伸ばしてくれるまでは…やっぱり、穴が開きっ放しよりはまだましかもしれん。悪い事ばっかり、って訳でもないから、この坊主の記憶も。」
「…え?…そう、なの?」
爪紅のその科白に思わず珊瑚が訊き返すと、童はまじまじと彼女の顔を見詰めた後に、可愛らしい満面の笑みで頷いた。
珊瑚は、その笑顔に些か救われた様な気がした。揺らいだ決心を奮い立たせるが如く、その笑みは彼女の背中を押す。
「でも、また誰かの記憶を奪うなんて駄目だ。その記憶の種の一粒を捜し出せばいい話だろう?」
この爪紅の精も、代替物などで何時までも満足出来る筈はないのだ。借り物などではなく、真実の父母の姿が欲しくて堪らなくなる日が必ず訪れる。
「簡単に言うが、あの鬼はおいら達の種が好物なんだ。もう喰われてしまっているかもしれないや…。」
「じゃあ、却って急がなきゃいけないじゃない。」
それはそうだが恐ろしくて一人では行かれん、との情けない言葉は流石に口に出来ずにいた精霊の眼前。
地へ寝かせた飛来骨を持ち上げ、すっくと立ち上がった珊瑚があっさりと言い放った。
「ほら、行くよ。案内しな。」
え、と爪紅が顔を上げ、
「…一緒に行ってくれるのか?」
信じられないという風に、人間の娘へと問い掛けると。
「落とした記憶は、本人のとこへ返すのが一番いいだろう?」
凛然とした瞳が、彼を見返していた。
善悪全てを抱き込んだ過去が、それぞれの現在を形作っているのだから。きっと、それを失くしてしまったら同じ人間には戻れない。
あの法師の深い慈悲も強い心も、越えて来た過去の上に成り立っているものならば ――― 今度こそ、揺らぎはしない。
爪紅の精はその珊瑚の顔を見上げながら、
(…だから、悪い事ばかりでもないんだなぁ。この坊主も。)
納得した様に呟いた言葉を、無論、声に出しはしなかった。
「この辺りだったんだけどなぁ…。」
山深く立ち入った珊瑚と爪紅は、小さな種の一粒を求め地面と睨めっこを続けていた。
「やっぱり鬼に喰われてしまったのかな…。」
「しっ。」
弱音を吐いた爪紅を制する様に、珊瑚が低く一言を零す。
(近付いてるな…。)
「な、なんだ?」
慌てて珊瑚の傍へと駆け寄って来た爪紅は、彼女の顔を見遣って問うた。
「…あたし達、鬼の棲み
処へ近付いてるみたいだ。」
「…え。」
それは、種を弾け飛ばしてしまったのはこの辺りだという爪紅の感覚が、間違いではなかった事を意味している。
「これだけ捜しても無いんだから、鬼に直接訊いてみた方が早そうだな。」
「ええーっ!?」
人間の娘の大胆な発言に、爪紅は思わず悲鳴を上げていた。
「恐いの?」
「こ…っ、恐くなんかないやいッ!」
あまりにも直球で訊かれ、爪紅の口から滑り出たのは本心に反した強がりな返事。
「じゃ、行こう。」
さらりと言ってのけた珊瑚の背後には、がっくりと肩を落とした爪紅の姿があった。
枝を潜り草を掻き、その鬼の元へは直ぐに辿り着く事が出来た。
草陰へ身を潜め、そおっと鬼の方を窺うと、何か生臭い空気が立ち込める中で彼奴は巨大な杯で酒を呷りつつ、空いた方の指先のそれまた爪先に極々微小な粒を乗せていた。
正に、彼奴がその爪紅の種を口にしようかというところ。
「あ!おいらの種っ!」
爪紅の悲鳴とも怒りともつかぬ叫び声を聞き終わったかどうかという素早さで。寸刻の間も置かず動いたのは、珊瑚の右の
腕。
下方から左上空へと振り抜いた右手から放たれる、白き武具。
草葉を揺るがし風を切り、飛来骨は縦回転を繰り返すと見事鬼の体躯と掲げた指の間に割って入った。
「!」
突如現出した曲骨が、己の鼻先を掠め上空高く舞い上がって行くのを鬼のぎょろりとした目が追う。
鬼にも種にも触れぬよう縦に旋回した飛来骨は、注意を引くという己の仕事を全うし、頂点へと達した後にその勢いを緩める事なく主の元へと翻って行く。それをがしりと右腕で受け止め、回り込んだ切っ先を背に携えた人間の女が鬼の双眸へと映し出された。
「…なんだぁ?きさま。」
種を喰らうのを中止し鷹揚に首を廻らした鬼が、怯える様子もなくこちらを見据えている娘へ、問う。
「ものは相談なんだけど、その種、この子に返して貰えないかな。」
この子、と紹介された爪紅はと言えば、珊瑚の左足の陰に隠れ、顔だけを覗かせている。
鬼が己の爪先にちんまりと乗った種と爪紅を見比べたところで、童は、あわわ、と呻き声を上げた。
「何を戯けた事を。爪紅の種は滅多に味わえぬ肴だと言うに。」
額の両端から空を目掛けて生えた、二本の短い角。その先端は、上向いた頂点から曲線を描き、地上を指差す様に些か下を向いている。その異形の角を振りながら、腹の底へと響いて来る声差しで鬼は答えた。
「けど、それは元々この子の物なんだ。あたしもあんまり手荒な真似したくないし。」
其処で、彼奴はがははと豪快に笑い飛ばした。
「手荒な真似?きさまがこの我に手加減してくれると言うか。面白い女よ。」
そう言った後に、杯の中の酒をぐいらと喉へ流し込み、口端から零れたそれを手の甲で拭った ――― のだが。
その"酒"が赤い色合いをしていた事を、珊瑚は見逃さなかった。
「…それは、人の血か?」
「…ああそうさな。きさまの生き血を一滴残らず差し出すと言うならば、返してやっても良いか。」
良い事を思いついた、とでも言う様な鬼のその提案に、珊瑚の陰に隠れた爪紅は青くなり震え上がる。
珊瑚の方は、鬼であろうとさして人には害のない生き物であるならば、無駄に命を奪わず穏便に済ませよう、などと思っていたのだけれど、どうやらそうも行かないらしかった。
「生憎とその条件は呑めない。」
「ならば腕尽くで取り返すが良かろう。」
鬼がそう言い終わった時には、既に珊瑚の右腕が唸りを上げていた。
今度は横回転で以って宙を駆ける飛来骨が、鬼の眼前へと一気に迫り、種を乗せた右腕を肘の辺りから容赦無く断絶する。
「!女ぁ…っ!」
猛々しい鬼の怒声が響く中。
その声になど怯みもせずに、疾うに珊瑚は地を蹴っていた。一息に縮めたその距離の先で。
鬼の体躯から分かたれた右腕が一回転し落下して来るのを綺麗に避けながら、ぴーん、と空中へ投げ出された種を掴み掛けたのだけれど。
「たかが人間の分際でっ!」
鬼が、左手に持った巨大な杯を珊瑚目掛けて投げ付ける。それを視界の端に認めた珊瑚は ―――
「邪魔をするなっ!」
閃く、
白刃。
抜刀したその流れの中で、刃先を起こさぬまま盾にする様に顔の前へ刀身を翳すと、折りしも其処へ杯が自ら斬り裂かれんとするかの如く飛び込んで来た。
己の眼前で砕け散った杯が、翳した抜き身を境界に左右へ飛び去って行くのを認めたか認めぬうちに、地表へ落ちた種へと珊瑚は素早く跳躍する。
しかし、左手を力の限り伸ばしたところで、いきなり上から何かが降って来た。
「!」
ぴっ、と、その左手の薬指から鮮血が迸る。上空から迫り来る気配に気付き、伸ばした左の掌中を慌てて引き戻し地表へ着かせ、浮いた身体の方向転換を図ったのだが、一足遅かった様だ。
気配の正体は、僅かに下を向いた先端を自在に伸縮させる事が可能な、鬼の角の片方。
轟音と共に地へ突き刺さった鬼の長躯の角の先に、刹那掠った指先の皮膚がすっぱりと切られていた。
「ちっ。」
直ちに崩した体勢を整えに掛かった珊瑚へ向かい、瞬く間に伸びたもう片方の角が間断を置かず、びょう、と突進して行く。
「ひいぃっ!」
帰れども主の手を失い、地面へ刺さりっ放しになっている飛来骨の陰で、爪紅は思わず目を覆った。
ずずずぅん、と、角が突き刺さり土埃の舞うその中で、
「口ほどにもないものよ。」
鬼は己の力に満足した様にせせら笑った。しかし、その愉悦に満ちた顔は直ぐに凍りつく事となる。
「だって、手加減して欲しいんだろう?」
その声は、
聳える鬼の巨躯の更に上から降り注ぐ。
地面へと橋を架けたが如く伸ばされた鬼の角。その伸びる起点となる、上向きの頂点。
身軽な退治屋の娘は、其処へ両足を前後に揃え直立していた。
左の指先から滴り落ちる己が血を、手首を投げる様にして振り払う。
「な」
血走った目を真上へと泳がせる鬼だったが。
「悪いけど、これ以上付き合っている時間はない。」
最後通告と同時、たん、と足場の角を些か後方へ蹴った珊瑚の身体が鬼の眼前へと落下して来た時には、振り上げた白銀の
刃が彼奴の体躯を袈裟懸けに斬り裂いていた。
再び土煙が上がる中、静かに着地した珊瑚は仰向けに斃れた鬼には見向きもせずに、鞘へと刀身を収め遣り種の方へと足早に向かう。
「見っけ。」
右手で拾い上げた粒を瞳の高さまで上げ、その無事を確認した珊瑚は何事もなかった様に振り返り、告げた。
「あったよ。あんたの両親の思い出。」
呆然と事態を凝視していた爪紅の精は、喜ぶのも口を閉じるのも忘れたまま、妖怪退治屋の毅然とした姿をただ見詰めていた。
珊瑚から受け取った"記憶の種"を、爪紅は己が頭に冠した花輪へ餌をやる様に与えてやった。すると、限りなく真ん丸に近い楕円の実がぱかりと口を開け、その種を音も立てずに飲み込んだ。
その童の姿をしゃがみ込んだ珊瑚が興味深そうに見守る中、爪紅の円らな両眼に光が宿って行く。
「おとう…おかあ…。」
紅葉宜しいその可愛らしい両手を己の頬へ添えた爪紅は、きらきらと瞳を輝かせ、うっとりした様に小さく呟いた。
蘇る思い出に酔い痴れる爪紅の幸せそうな顔を見遣り、珊瑚も何やらほんわかとした暖かい想いに包まれていた。
「戻ったみたいだね。」
「うん!思い出した!おまえのお蔭だっ!礼を言う、娘!」
嬉しさに頬を紅潮させた爪紅は、最上のご機嫌振りを珊瑚へ示してやる。それはまるで、
(犬だな…。)
小犬が尻尾をぶんぶんと振っているかの如き愛らしさであった。
「そうだ、坊主の記憶、返さねばな!」
はっ、と娘の本願を思い出した爪紅は、再び片手を頭に翳すと、花冠の中の一つの実をこつん、と
叩いた。
すると、軽く弾け飛んだ種が一粒。すぽーん、と緩やかに宙を舞ったその種は、開いていた珊瑚の右の掌へちょこんと着地してみせた。
「それがあの坊主の記憶だっ。それを食わせてやれば元に戻る!」
「こんな、小さなもんが…。」
己が手中に鎮座した褐色の粒を見下ろす、珊瑚。
この中に、弥勒の記憶の全てが詰め込まれているなどとは俄かには信じ難かったけれど、先の爪紅の様子を見る限りそれに嘘はないのだろう。人間の記憶など、所詮はこんなものなのかもしれない。
その時、爪紅に法師の本当の思いを訊いてみれば良かったのだろうか、との思考が一瞬過ぎった。
『俺は、こいつを恐がってたか?』
その、真実の心境を。
そして、
『あんた、俺の…なんだ?』
問うた彼より問われた彼女の方が知りたいであろう、「仲間」と誤魔化したその答を。
「ねぇ、あんた、まだ法師さまの記憶、覚えてる?」
「いや、その種を出した時点でもう消えたぞ。」
その爪紅の返事に、珊瑚は何故か安堵している自分に気付く。
こんなのは、公平じゃない。あたしが勝手に聞いて良い筈がない。第一、他人の口に語らせるなんて馬鹿らしく、意味もない。
そして何より、喩え爪紅が「覚えている」と答えても、その先を訊く気なんか…勇気なんか、微塵もないくせに。
珊瑚は、不思議そうに己を見上げて来る爪紅へと別れを告げる。
「じゃ、確かに返して貰った。いい?もう他人の記憶なんか盗んじゃ駄目だよ。」
「うんっ。」
元気に頷いた爪紅の精のその仕草に、自然、笑みが洩れた。
何時までも手を振って来る彼へ名残惜しげに背を向けると、珊瑚は帰路へと就く。
その利き手に、法師の思い出を優しく握り締めながら。
早朝に出立した筈だったけれど、辺りは既に夕刻へと向かっている。傾いた太陽は朱色の幕を引きながら、山の端へと近付いていた。
楓の村へ間も無く到着しようかという頃に、足早に道を行く珊瑚の視界へ黒い人影が滑り込んで来る。
「…法師さま?」
濃紫の法衣はないけれど、あれは見紛う筈もなき
彼の法師。両の袂へ腕を挿し入れたまま前方から歩を進めて来るその姿を認め、珊瑚は思わず駆け寄っていた。
「どうしたの?何かあったの?」
矢継ぎ早に質問を口に乗せると、呆気ない答が返る。
「いや、帰りがちょっと遅いんで表に出てみたんだが。丁度行き会って良かった。」
…ちょっと待て。
何の為に七宝と雲母を置いて来たと思うのだ?今此処へやって来た法師は、一人きりではないか。爪紅の生息する場所さえ覚えてはおらぬくせに、勝手にふらふら出て来たと言うのか。
「…七宝と、雲母は?」
「気付かれない様に気は配って来たつもりだけどな。」
「……。」
流石、と言って然るべきなのかどうか定かではないが。
この辺り、記憶があろうがなかろうが、どうやら変わりはないらしい。
(あいつら、護衛の意味ないだろうが…。)
はぁ、と諦めの溜め息を吐いた珊瑚だったが、その何倍も重要な事を思い出す。
「法師さま、これ。」
「なんだ?」
差し出された珊瑚の右の掌に乗った植物の種を見遣り、弥勒が端的に問うた。
「法師さまの記憶。取り返して来たよ。」
こんなもんが俺の?などと言いながら、彼女の掌中から
摘み上げたその何の変哲もない種を、眼前へ持って行き穴が開く程見詰める、弥勒。
「それを食べれば、元に戻るって。」
そう説明を寄越した珊瑚の方へ視線を移した弥勒は、今度は無言になった。
「…何?」
その沈黙を訝しんだ珊瑚が、背に負った飛来骨をゆっくりと肩から下ろしつつ短く訊ねると。
「…これを食ったら、やっぱり俺はあんたの事を忘れるんだろうな。」
「?忘れるんじゃなくて、思い出すんでしょ?」
弥勒の言っている意味が、珊瑚には理解出来なかった。彼女にしてみれば、彼の言う"俺"がこの場合何処を指しているのか、判断に窮するところであった。
「あんた、記憶あった頃の俺の事、好きだったろ。」
「は…?」
藪から棒に何を言い出すのか、と珊瑚はぽかんと口を開けてしまう。…図星だなんて、誰が言える?
「そいつは戻って来るけど、俺は消える、って事だ。」
生まれていた、新たな人格。たった二、三日と言えど、今の彼にとってはそれが記憶の全て。しかし、この種を口にし、元の弥勒が戻ってくれば、自ずと"二、三日生きただけの弥勒"は消え行くしかない。
失われた記憶を取り戻したいと願ってはみたけれど、それは即ち、己の消滅を意味し ――― なれどその様な板挟みに陥ろうとも、結局は、行くべき道は一つ。
目の前に居る、この女の望んでいるものは ――― そしてそれから逃れる
狡賢さも、今は持ち合わせておらず。
何も考えず、それが当たり前かの如く種を差し出した己が行動を恥じているのは、珊瑚。
「……。」
弥勒の呈した言葉と沈黙に、如何に自分の行った事が短絡的であったかを、悟る。
こんな風に、既に"法師"とは別の自我が芽生えていようとは、考えてもみなかったから。
「…そんな顔すんなって。」
「だって…」
「あんたを思い出したいと言った科白に、嘘はねぇよ。」
「……。」
だから珊瑚が罪悪感を抱える必要はないのだと、言外に告げる弥勒の声。
「その代わり、"俺だけの記憶"ってのを一つ土産にくれないか?」
「え?」
唇を噛み俯いていた珊瑚が、その弥勒の言葉に顔を上げると、背を屈め
頭を傾げた彼の瞳が間近に迫っていた。その己を射抜く甘やかな眼差しに、思わず珊瑚も瞼を閉じる。
下ろした右手に握っていた飛来骨の背負い紐から指が解け、がららん、と彼の武具の全身が地に伏した。
…互いの唇が触れようかという、その瞬間。
「…っ、ごめんっ!」
重なる寸前であった二つの
面の間に滑り込んだ、珊瑚の右手。その掌が弥勒の口許を塞いでいた。
「あ、あの、やっぱり、あたし…」
彼の顔の下方へ掌を添えたまま、思い切り下を向いてしまった珊瑚が、しどろもどろになりながらも言い訳を述べようとする。弥勒の方は、それ以上無理強いする様子もなく、珊瑚のその手を離れて頭を起こし、元の直立した体勢へと戻っていた。
彼の面が離れて行くのを追う様に、珊瑚も真っ赤に染まった顔をおずおずと上げるけれど、既に言い訳の方は行き詰まっている。
己の抱いている想いは、記憶があろうがなかろうが、眼前に佇む彼に向けられているのは間違いない。けれど僅かに、まだ知り合ってから間もない"誰か"に見えてしまうという事実も、偽る事は出来なかった。
「わかってたよ。」
「……。」
薄く笑った弥勒の顔に、珊瑚はやはり黙りこくるしかなかった。
敵わないのだ。結局は、"どちらの弥勒"にも、見透かされているのだろう。
済まなそうに見上げて来る珊瑚へ苦笑を見せた弥勒は、何の前触れもなく、ぽいっ、と極小の種を口の中へと放り込んだ。
「あ」
彼のいきなりなその
為様に、珊瑚が小さく声を上げる。
かりかり、と、種を噛み砕く音が微かに聴こえた。眼を瞑った法師の様子を、固唾を呑んで見守る珊瑚。
ごくり、と飲み込んだ後。
「…どう?」
恐る恐る珊瑚が声を掛けるが、それに対する弥勒の返答は無い。
胸中でぴぃん、と張られた緊張の糸は、逸る鼓動に合わせ今にも切れそうに震えていた。
そんな中、ゆっくりと弥勒の双眸が開けられて行く。
「…思い出した?」
再び、縋る様に珊瑚が問うが。
焦点の定まらぬ弥勒の視線は、珊瑚の顔の辺りを彷徨うばかりでやはり返事を寄越さない。
不安を煽る沈黙が横たわるのみ。
「…駄目、なの…?」
我慢し切れず、眉根を寄せた珊瑚が弱々しい声音を吐いた。
嘘。
なんで?どうして?これ以外に、方法なんて知らないのに ―――
ぎりぎりのところで保たれていた糸が、絶望という衝撃に耐えられず、ぷつん、と切れた。
「なんで!?なんで思い出さないのっ!?」
それまでの空気から一転。
がし、と突然法師の胸座を掴んだ珊瑚は、知らず大声を上げていた。
「ちょっと、思い出しなよ!これしか方法ないんだよ!?」
緇衣の襟元を両腕で締め上げる様に掴み、ゆさゆさと力任せに揺する珊瑚の声は止まる気配を見せない。
「ほんとに飲んだ!?ちゃんと噛んだのッ!?」
「いや、あの」
「大体ねぇっ!なんであんなもんに簡単に記憶を盗まれちゃったりする訳!?情けないったら、あんたそれでも徳の高い法師なのッ!?そんなんじゃ、"自称"だって言われても文句なんか言えないじゃない!」
あんなもん、という無礼極まりない発言を彼の精霊が聞いたなら暴れ出すのはまず間違いないであろうが、その暴言も、がくがくと前後に振られてもげそうな法師の首も、一切無視した珊瑚が一気に捲くし立てた後。
「あたしだったら…っ」
一刹那の、間。
じわ、と潤み始めた瞳を湛えた珊瑚は、胸座を掴み遣った法師から視線を外すと、力任せに瞼を閉じ、叫んだ。
「あたしだったら記憶なんか失くしたって、法師さまの事だけは絶対忘れたりしないんだからっ!!」
「ほぅ。それは素晴らしい。」
「そう、すば…え?」
聞き覚えのある口調を耳にし、珊瑚は一瞬動きを止めた。
「おまえの心に、そんなにも強く私の事が刻み込まれていようとは。全く知りませんでしたな。」
あんぐりと口を開けた珊瑚へ、にや、と笑みを向けるのは ――― 弥勒法師。
「……だっ、」
きりきりと吊り上がって行く、珊瑚の柳眉。
「騙したなこの腐れ詐欺法師ぃーーーっ!!」
「おまえが早合点しただけです。」
黒衣の襟元を掴み掛かったまま怒鳴る珊瑚をものともせず、弥勒は綽然たる態度で言ってのけた。
耳まで赤く染まった珊瑚は、悔しそうにその胸元を突き飛ばす。が、
「…珊瑚。」
微笑と共に己の名を呼ぶ弥勒のその声に、珊瑚は、くら、と軽い目眩を覚えた。
欲しかったのは、たった、一言。
その珊瑚の隙を見逃さず、彼女の両手をすかさず己の左右の手で以って、ぎゅう、と包み込んだ弥勒が猶も続ける。
「おまえがそんなにも私の事を想っていたとはっ。」
「あ、あれはただの言葉の綾だッ!」
あたしはあんたみたいに記憶の全部を落っことす様なとんまじゃないって意味だ、と早口に苦しい弁解を試みつつ、なんの余韻もなく彼の両手を強引に振り解いた。
名残惜しげに離れ行く細い指先を見遣っていた法師の視界に入ったのは ―――
紅。
「珊瑚、おまえ怪我を?」
「え?」
その法師の指摘に、珊瑚は忘れ去っていた己の痛みを思い出す。
左手を持ち上げ確かめると、薬指の先から流下する、血。それが爪の表面にも間にも触手を伸ばし、爪諸共指先を深紅に染めていた。
それを認め、まだ止まってなかったんだ、と呟いた珊瑚が、
(やっぱりあたしには、爪紅なんて可愛らしい花よりも、血の方がお似合いか。)
などと心中で溜め息を吐きつつ、
「こんなのは舐めときゃ治る。」
と、続けた科白が終わったと同時。手首を掴まれ引っ張られたかと思うと。
ぱく。
法師が、その染色を施したかの如き珊瑚の指先を咥えていた。
瞬間、何が起こったのか理解出来ずにいた珊瑚だけれど、爪先へ絡んだ生温かい感触に因って我に返る。そしてその直後、周囲に響き渡ったのは、絹を裂くよな女の悲鳴。
「きゃーーーッ!!」
飛び上がらんばかりに驚いた珊瑚は、弥勒の口中から己が指を引っこ抜くと、ずざざざざざざっ、と途轍もない速度で後退っていた。
「ななな何すんだっ!」
「いやおまえが舐めておけば治ると」
「あんたが舐めるなぁーッ!」
これ以上はないと言う程に、全身朱塗れになった珊瑚は、両手を隠す様に己の背後へと回す。
その指先はと言えば、体中の血が其処へ集中してしまったかの如く…否、薬指に心臓がもう一つ出現したかの様な感覚、と言った方が正しいだろうか。どっどっどっ、というその二つの心の臓の高鳴りは、己が耳へ嫌でも爆音の様に響き渡り。
「つれないですなぁ。」
これみよがしにがっくりと肩を落とした弥勒が、寂しそうに珊瑚の方を見遣る。
「昨日も先程も、あんなにしおらしかったというのに…。」
その弥勒の科白に、ぴく、と反応する、珊瑚。
「…記憶ない間の事、覚えてるの?」
「ええそりゃもう何から何まで。」
その言葉に、記憶のない彼と自身との間に交わされた遣り取りを思い返し、嘘でしょ、などと焦ったりもするが。やっぱり頬の一つも引っ
叩いておくべきだったか、と思えども、既に後の祭り、であった。
「記憶を失くしていた方がおまえに優しくして貰えるのなら、些か勿体無い事をしたかもしれませんな。」
「何言ってんの!?」
軽い気持ちで発した弥勒の戯言へ、思いの外怒りを含んだ珊瑚の声が、飛んだ。
「あんたね、そういう不謹慎な事言っていいと思ってんの!?どれだけ皆が心配したか覚えてんだろ!?どれだけ、」
あたしが苦しかったと ―――
言い掛けた言葉は、声になる事はなかった。
(そんなのは、あたしの勝手だ…。)
そう、それは法師が問われるべき責などではないのだ。
「済まなかった、珊瑚。」
なれど、全てを見透かした様に、弥勒は静かにそう言った。
そして珊瑚の視界へ覆い被さる ――― 漆黒。
何時もの様に殴り飛ばす事さえ忘れていた。頬を乗せた衣から鼻孔へ微かに届く抹香も、背に廻された両の腕も、酷く懐かしいものの様に思われて、閉じられた筈の涙腺が再び緩んだ。
湧き上がる安心感に、己の方が困惑する程で。
承知していた筈なのに、訪れた安堵に改めて認識する、先程までの不安の大きさ。
記憶のない彼の自我を慮りながらも、こうして過去を取り戻した弥勒を前にほっとしてしまっている己の現金さに、ほんの少しの後ろめたさを抱いてしまうけれど。
何とか落涙だけは免れ様と気を張る珊瑚の背を抱く弥勒の腕に、きゅ、と力が加えられ、皮肉にもそれが珊瑚を我に返す合図となった。
「ちょ、ちょっと、もういい!わかったから、放せっ。」
珊瑚は無理やり彼の胸から身体を離し、声を荒げる。
下睫毛に滲んだ涙と仄かに頬へ乗せられた桃色を目に止めた弥勒は、まだ足りないのですがねぇ、などと何時も通りの戯言を放ちながらも、珊瑚を解放してやった。
今、己の表情が普段とは違っている事を自覚している珊瑚は、その顔を弥勒にこれ以上見られまいと、口を引き結び飛来骨を持ち上げる。
温かな腕、馬鹿馬鹿しい会話、そして己を呼ぶ優しい声。何もかもが随分と長い間失われていた様な気分がして泣きたくなった、なんて絶対に教えてやらない。…尤も、それも全て見抜かれているのかもしれないが。
弥勒の方は見ぬままに彼の脇を通り抜ける、その擦れ違いざま。
「七宝には、自分で謝ってよね。」
今頃泣きべそ掻いて法師さまを探してるに決まってるんだから、と付け足した珊瑚へ、はい、と弥勒は短く応えた。
飛来骨を背負う、その珊瑚の小さな背中を眺めながら、弥勒は胸裏で再び詫びていた。
忘却は、時として、罪。
記憶がなかったとは言え、珊瑚には、随分と辛い問いを投げ、告げる方が痛いであろう言葉を言わせてしまった。
記憶の欠落した中で不安はあったものの、全てを忘れ去り無となった己より、如何ともし難い状況で苦しんでいたのは彼女の方であっただろう、と、思う。
風穴を畏れていたか、と。思い出す事とこのまま生きるのとどちらが楽か、と。
逃れる幻夢など叶わないのに、駄々をこねる子供の様に、彼女が困惑する問い掛けばかりを続けた自身を、心底不甲斐無く思った。
珊瑚の戸惑った表情も、困苦に満ちた眼差しも ――― 凛とした瞳も。はっきりと脳裏に浮かべる事が出来る。
彼女の言う通り、全く以って、情けない。
何よりも失いたくないと思っていたものを、至極あっさり意識の彼方へ落としてしまった。
その方が楽ではないかだと?
今ならば、答は否やと明確に断ずる事が出来るのに。
思い出したくもない艱難辛苦を滅する術と、彼の娘の姿を載せた天秤を突きつけられたなら、迷う事なく彼女の方を掬い上げるであろう己を知っているのに。
そう、それなのに。あんなにも、あっさりと…だ。
随分と情けない記憶が増えてしまった、と、自嘲気味に笑む、弥勒。
(暫く頭、上がんねぇなぁ。)
あんたは俺のなんだと訊ねた際の彼女の答には不満もあるが、それは今引っ繰り返して追求する話でもないだろう、と己を納得させていた。先程、滅多に聞けぬ貴重な ――― "素晴らしい"言葉を頂戴したのであるから、これ以上我儘は言うまい。
それにしても。
記憶を失っていた"俺"が、一瞬あの種を取り込むのを躊躇った理由がこの俺にあると言ったら、珊瑚はやはり不思議な顔をするだろうか。
あろう事か"俺"は俺に嫉妬をしていやがった。
珊瑚との過去を知るこの俺へ羨望を抱きながらも、俺に彼女を返す事を嫌がった。
その嫉妬心を俺は覚えているけれど、今の俺が奴へ向けている軽い妬みを、奴は知らない。
あんな風に、戯言と突き放さずにこの自分へ付き合ってくれる時が、あの娘にどれだけあるだろう?
それが己の遣り方の拙さが原因だとしても。
彼女と共有した筈の甘い記憶が、自分のものであって自分のものではないという、もどかしさ。
絡んだ筈の視線が ―――
触れたのも言葉を交わしたのもこの己でありながら、彼女の目は自分を見ていた訳ではないと思うと、"俺"に対し、説明のつかぬ、けれど子供じみたものと承知している感情が湧き上がるのを禁じ得ない。
はぁ~あ、と嘆息するのは、無論、胸の中。
果たして、珊瑚は信じるだろうか。
同一の身体の中で生まれた二つの心が、互い"自分"に嫉妬していたなどという、この上なく滑稽な笑い話を。
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51000ゲッター・さくらさんご依頼の「妖怪に記憶を奪われた法師を元に戻す為、一人奮闘する珊瑚嬢」でございました。
女子が爪を染めて遊んだという「爪紅=鳳仙花」が日本に伝来したのは、[1.平安時代] [2.約500年前 ][3.元禄一歩前 ]など異説があるらしく(しかも3が主説?)非常に微妙な小道具なのですが、[1]推奨という事でご了承下さい。
記憶のない法師の人格のパターンは色々と考えたのですが、記憶なし→素に近い→不良寄り→でも不良の経験は忘却…という事で、あんなフツーの人になってしまいました。
「俺」と「"俺"」がこんがらがって、非常にわかり難いですスミマセン。そして最後のシーン、思いっ切り長回しになってしまって…申し開きも立ちませぬ。
さくらさん、お待たせした上に内容が微妙に違っている様な?というトボけた話になってしまいました。ど、どうかお許し頂きたく…!
では、最後までお読み下さいまして、有り難うございました。
2002.02.01